日本国有鉄道 労働運動史(別館)

国鉄で行われた生産性運動、通称マル生運動に関する関連資料をアップしていくブログです

生産性運動前後の国労の動き、動労の動きを中心に(EL・DL一人乗務反対闘争)

動労と生産再運動と言うことを検討する前に、もう少し時代を遡って、動労による機関助士反対闘争についてもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

 

動労の行った機関助士反対闘争とはどのようなものだったのか?

動労による機関助士反対闘争は、昭和42年3月に国鉄当局が5万人合理化の一環で打ち出したもので、

国鉄各組合に五万人の合理化案を発表 3/31

国鉄当局、三労組に対し第三次長期計画のための近代化・合理化案を提示。国労動労、「合理化」案に対し断固撤回を求めると抗議声明 3/31

ということで、特に機関車乗務員を多く擁する動労では、EL及びDLにおける機関助士の反対運動を強く打ち出していました。

そして、この運動はた昭和43年9月20日, 「安全問題については,第3者による調査を依頼し, その答申を尊重し、労働条件については協議して きめる」ということで当面の集約が行なわれたと以下のように記されていますが。

当然のことながら、これに対してより有利な条件を引き出したい動労は、一人乗務反対闘争を打ち出し、当局と激しくタイル津することとなります。

 

この運動に関しては、当局側の見解ではどうであったのか?

国有鉄道 昭和43年11月号 EL・DL一人乗務問題では以下のように総括しています。

  • 国鉄ではEC・DCにあっては原則的に一人乗務であり80%が一人乗務となっていること。(タブレットの授受を伴う優等列車の場合などは助士が乗務)
  • 蒸気機関車のように機関車操作と焚火作業と言う業務を分担しているわけではにないこと
  • 機関車も1960年頃からデッドマン装置(EB装置)を整備するなど、一人乗務に対するバックアップが行われていたこと。
  • ATSその他の保安装置も整備されてきていること
  • 外国では既に機関車も一人乗務が進んできていること

等を理由に挙げていました。

以下を引用してみたいと思います。

国鉄における近代動力車の乗務員数問題は,動 力近代化の進展に伴い、すでに昭和34年から労使 間で取り上げられており, EC・DCについては 組合と協定を締結し、約80%が1人乗務となって いる。
いわば,近代動力車の1人乗務問題は,今日ま で10年近い経緯をもっているものであって、突然に昨年提起されたものではないといえる。
もちろん、今回提案した,EL・DLについて も近代動力車という点に変りはなく、本来的に1 人乗務が可能なような車両構造となっている。
すなわち、蒸気機関車が操縦作業と焚火作業と いう異質の2作業があることにより機関士,機関 助士の2人が必要であるのに対し,近代動力車 は、焚火作業の必要性がなく、機関士1人で操縦 できるようになっている。
さらに保安の点からみても、車両設備の近代 化、ATSの完備,信号機など地上設備の整備, 増設などを行ない、安全度の面でも何ら心配ない ようになっている。
ちなみに、1人乗務について外国の例をみてみ ると,欧米鉄道においてはすでに1人乗務が実施 されており、特にスイス連邦鉄道では98%が1人 乗務となっている。このほかイギリス国鉄58%、 (EL・DL), フランス国鉄=EL25%, DL38 %, スウェーデンDL 90%, アメリカ90%(貨物) など逐次1人乗務化が進められており,日本の大 手私鉄をみても、ELはすべて1人乗務となっている。

と書かれているように、国鉄としては、近代動力車の一人乗務を進めたいのですが、その背景には国鉄財政が、4年続きの赤字であること。

その解決のためには合理化を行う必要があるとしていたわけですが、当時の国労動労にしてみれば合理化=人減らし・・・組合員の減少という考え方に凝り固まっていて。

そこに、階級闘争という考え方が入ってくるものですから、合理化を受け入れることは資本家の搾取をさせるものだという考え方に陥っていました。

実際、生産性運動が始まってからの攻撃でもこの辺を常に突いていたことからも窺えるわけですが、少なくとも当時の動労にしてみれば、動力車乗務員を囲い込んでおきたいという思いは人一倍強かったと思われます。(機関車乗務員が全員動労と言うことはなく、電車運転士などは国労も多く、もちろん鉄労も居たわけで、完全な職能別と言うわけではなかった点は注目していただきたいと思います。

国鉄は、昭和42年度の決算発表した時、組合に対しても合理化方針を提示、その1週間後には国労動労は、機械化・近代化に反対して闘争を行うという方針を発表しています。

昭和43年 年表 出典:国鉄があった時代

昭和42年度決算発表 8/16

42年度決算を4年続きの赤字で 繰越欠損金1,477億円、長期負債1兆6,435億円と発表

中略

国労動労ダイヤ改正 反合理化闘争方針発表 8/22

労・動労は、22日、10月ダイヤ改正と、機械化・近代化に反対して闘争を行なう方針を発表

国労・動労、ダイヤ改正 反合理化闘争方針発表 8/22

国労動労ダイヤ改正 反合理化闘争方針発表 8/22

これに対して、国労動労は上記のように反対闘争を打ち出します。

更に。動労社会党を通じて、反対運動を展開していくこととなります。

以下は、当時の議事録を参照したものからの引用ですが、こうした質問は動労からの意向を受けて行われたものでした。

該当部分だけを抜粋してみたいと思います。

第57回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 昭和42年12月14日

 

○後藤委員 前略
 さらに機関車乗務員の、機関助士を廃止してしまおう。これもことしの初めに動労のほうには説明があったそうでございますが、来年の四月ごろからやるという説明が、一月一日から実施をしたいというふうなことで、そういうふうなやり方自体が今日のこういう事態を起こしておる原因ではないだろうか。聞くところによりますと、両組合におきましても、合理化問題につきまして反対はいたしておるけれども、この問題についてはこうだ、この問題についてはこうだといって、きちっと整理をしておるそうでございます。何でもかんでも、とにかくまっこうから反対なんだという態度ではないと私見ております。ただ、これらの問題を、労働組合と管理者側のあなた方のほうと、十分な話し合いもせずに、来年四月にやると言っていたものを一月に繰り上げて実行しようとしたり、あるいはいままで団体交渉もやらずに一片の説明だけで終わってしまって、すぐ合理化の実行に移してしまおう、こういうふうな無理な持っていき方をされたところに今次のようなこういうかっこうが生まれたのではないだろうか、こういうように私は考えておる次第でございます。
中略、人間は感情の動物でありますから、どうもこじらかす原因がそこらにあるのではないだろうかというふうに私は考えるような次第でございます。この点についてどうお考えになるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。

 

後藤委員(後藤俊男)とは、日本社会党の議員  国鉄職員です。

参考:衆議院議事録 *1

 

同じく、参議院議員の議事録も参照してみたいと思います。

○稲葉誠一君 私は、日本社会党を代表しまして、今日、国民が最も不安に思い、明らかにしてほしいと考えていることを、率直にお尋ねいたします。

中略
  第三は、国民生活に関しての問題であります。国民生活は不安で一ぱいであります。物価はさっぱり下がらないし、その上、合理化攻撃が労働者に加えられております。物価については、さきに質問がありましたけれども、一体、上がることをいいと考えているのか、悪いと考えているのか、やむを得ないと考えているのか、アメリカなどでは一、二%くらいであるのに、なぜ日本だけこんなに上がるのですか。政府は、本年度どういう抑制策をやるのか。勇断をもってやると言いながら、さっぱりやらないではありませんか。自由主義経済では本来、物価の抑制というような問題に対しても限界があるのですか。中小企業は三月危機におびえております。大企業は栄えても、それが中小企業に回ってくるころには、不況がきて、しわ寄せがくるのですからたまりません。もちろん三公庫の四半期ごとの融資も一~三月はふやすと言っておりまするけれども、それだけでは足りないのでありまするから、四十三年度予算の事実上の先食いをしてまでこれを救済すべきではないでしょうか。
 国鉄の五万人の合理化問題は、基幹産業という名のもとに、独占資本の特別運賃輸送や赤字線区の建設、借金をさせての膨大な工事計画などで採算の合わない政策を押しつけるために、労働者の犠牲による合理化を徹底してやろうとしてこの案が作成されました。輸送力は四十六年には二百五十万キロに達するわけですから、増員こそ必要なのに、このような提案は、首切り、労働条件の低下を招き、安全輸送に影響を及ぼすものではないか。したがって、撤回すべきものと考えるのでありまするが、どうですか。機関助士の廃止は合理化以前の暴挙であり、保安を全く無視しているのではありませんか。検修新体制にしても、経費節約の美名のもとに各地方間の競争と職場の締めつけ、要員の圧縮が行なわれます。このようにした結果、事故が起きたら一体どうするのですか。その責任を総理大臣や運輸大臣、あなた方が負うのですか。国鉄の赤字問題は、国家がどの程度協力するかにかかっているわけです。造船には百二十五億の利子補給をし、国鉄に五十四億とは非常におかしい、増額すべきではないでしょうか。国鉄運賃や私鉄運賃の値上げは国民生活に非常に大きな圧迫を加えておりまするので、運賃、定期とも値上げを差し控えるべきではないですか。特に私鉄が巨額の利潤をあげておりながら、これに便乗をして定期代の値上げをはかるというのは許せません。所見を承りたいのであります。運輸省汚職が多過ぎます。綱紀粛正の措置と運輸行政の今後のあり方についてのお考えをお聞きいたします。
 以下。略

稲葉誠一日本社会党議員で、検事・弁護士から社会党代議士になっています。

参考:参議院議事録 *2

なお、全文は、別途blogに抜粋して貼付しておきますのでそちらをご覧ください。

全文はこちらを参照してください。

jnr-era.blogspot.com

jnr-era.blogspot.com

このように、動労は総評を通じ、日本社会党からも機関助士反対闘争を行ったとされています。その辺は、国鉄動力車 順法闘争と労働運動では、以下のように記述されています。

一方、国会においても社会党を中心に、社会労働・運動各委員会で運輸省国鉄当局に対する追及が行われたのであるが、世論操作の担い手であるマスコミは、助士廃止を"果たして安全か"という方向でキャンペーンをはったのである。

 それは、国会における社会党の追及などが"二つの目より四つの目”"安全確保こそ国鉄輸送の最大使命"という観点に立ち、もっぱら助士は医師が危険だという論拠をしめしたこともあって、輸送の安全確保という観点から助士廃止をとらえ、国鉄当局は科学的に"安全性"を立証するべきだという論調を連日のように掲載した。

参考資料:国鉄動力車 順法闘争と労働運動 *3

 

思わず、長くなってしまいましたので、機関助士廃止反対闘争のところで終わってしまいましたので、機関助士反対闘争に関してもう少し続けさせていただきます。m(_ _)m

 

続く

 

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*1:第57回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 昭和42年12月14日

*2:第58回国会 参議院 本会議 第3号 昭和43年1月31日

*3:松崎明 谷恭介 共著 三一新書