日本国有鉄道 労働運動史(別館)

国鉄で行われた生産性運動、通称マル生運動に関する関連資料をアップしていくブログです

生産性運動導入から、中止まで 第六話

前回は、「管理局による温度差、さらには管理局の非協力な部分がネックとなるのですが。その辺はまた次回にお話をさせていただこうと思います。」
と言うことだったのですが、実際の生産性運動の実践効果はいかほどのものであったのか、再び「国鉄を売った官僚たち・大野光基著」から引用させていただきたいと思います。

生産性運動の実践効果として
① 自主勉強会
② 生産性掲示
③ 生産性職場情報の発行
④ そのほかの具体的実践活動
⑤ 生産性推進チーム(国鉄再建会)の結成
⑥ 違法スト反対・不参加行動
等に分類できます。

そして、生産性運動の中から、具体的な実践運動になった例の一つに鶯谷駅で、朝のラッシュ時にウグイスの声を流しているようですが、これも実は生産性運動の中から生まれたアイデアであったそうです。

その辺を、「国鉄を売った官僚たち・大野光基著」から引用させていただきます。

引用ここから

その各地の職場情報の中から生産性運動が具体的にどのような実践活動となって現れていったかを紹介してみましょう。
「生産性教育を受けた一職員のアイデアでした。鶯谷駅では、ラッシュに放送でがなり立てるより、いっそのこと、鶯の鳴き声の録音テープを流そうと言うことになりました」


引用ここまで

他にも、郡山ヤードの保線支区の支区長が貨車ヤードを眺めていますと、駅の人たちが草取りをしている、本来は草取りは駅職員の仕事なのですが、これを保線区で行うことで、駅職員には営業活動をしてもらってはどうかと言うことを発言したところ、職員も賛成してくれて、ヤード内の草取りは保線区が行うことになった・・・・等々、非常に良好な関係が構築されたと書いています。
このように着実にその成果を上げていく生産性運動は、昭和45年度監査報告書では下記のように高く評価されていました。

特に日本生産性本部が推進している生産性運動に関する教育が全社的に行われたこともあって、 職員の間に国鉄の現状についての理解が深まり、再建意欲は急速に向上しつつあります。 これらの諸施策の実施にあたっては、 今後さらにその趣旨の徹底をはかり着実に推進する必要がある。

また、監査報告書では、生産性運動を行っている反面で、違法ストライキなどにより、未だ争議行為が続いているとして、国鉄財政再建に労使一体となって取り組んでいるとは言えないとして、下記のように記述しています。

昭和45年度においては、 近代化、合理化の諸問題の解決が比較的順調に行われ、 実質的には、 労使の歩み寄りに前進がみられたものとしえましょう。しかしながら、 一部においては依然として争議行為等が行われ、 国民の目からは、 労使が一体となって国鉄財政再建に取り組んでいるとはいい難い現状である。



国鉄監査報告書 昭和45年

また、国鉄当局、特に本社などでも、幹部クラスは生産性運動に懐疑的というか、現状維持を図りたいグループがあったようで、秘書課長や文書課長、労働課長といった、最上席課長が、生産性運動の青年職員意見発表会に欠席するなど精彩を欠き、むしろ国鉄の最高幹部層の生産性運動に関する考え方がどのようなものであったのかを物語っていると言えそうです。
そして、こうした、守旧派的な考え方は、国鉄改革時の時にも見えるわけですが、変わることを拒むということは、時には時代に大きな過ちを犯すことになります。

次回は、幹部クラスの非協力と組合の反撃という点でお話をしたいと思います。

 

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